間宮兄弟 江國香織著

ちょっと変わった兄弟の幸せな暮らし

物語の主人公は間宮兄弟。三十代の二人兄弟です。

兄はビールメーカーで会社員、弟は学校用務員をしています。父は若い頃に他界、母は祖母のお世話をするために遠方で暮らしており、兄弟で二人暮らしをしています。

間宮兄弟はとっても仲良し。仕事が終わったあとは一緒にごはんを食べ、レンタルビデオショップで借りた映画を見たり、お気に入りの野球チームの試合を見たりして過ごしています。

二人にはガールフレンドと呼べるような人はいません。それどころか、女性とほとんどまともな交際をしたことがありません。

そんな二人に対し母親は「早く結婚して孫の顔でも見たい」と思わなくもないのですが、「元気で暮らしてくれているからいいか」と、温かい目で見守っています。

兄弟自身も、自分たちの生活に概ね満足しているようです。仕事はめんどうなこともあるけれど、それなりに気に入っています。誘われれば同僚と飲みに行ったりもします。

彼女がほしいと思わなくはないけれど、自分のことを恥ずかしいと思っている様子はありません。

彼女ができることを諦めたわけでもないし、かわいいと思ったレンタルビデオ屋の店員と仲良くなろうと試みたりもします。

 

自分基準で幸せに暮らしている人たちを邪魔してはいけない

間宮兄弟のような人、あなたの周りにもいるのではないでしょうか。

わたしは人生で何度か出会ったことがあります。周りからはちょっと浮いていて、でも本人はそれを気にしてない様子で、むしろ自分の好きなことをして楽しそうに暮らしている、そんな人たち。

女性だったらこうでないといけないとか、何歳ぐらいになったら結婚してないといけないとか、そういった世間の基準にとらわれずに快適に暮らすのは、簡単なようでいてそうではないというのが現実ではないでしょうか。

どれだけ世間の基準から外れていたとしても(というか、世間の基準ってなんだろう)、本人たちが快適で幸せであればそこに問題はありません。本人たちが辛そうにしていれば、周りが手助けする必要もあるかもしれません。

ですが、そうでなければこちらの価値観を押し付ける必要はないのです。それがどれだけ相手のことを考えた結果の行動だとしても。

間宮兄弟の周りの人は、彼らのことを「変わっている」と思わなくはないのですが、「彼女でも作ったら?」「いい年なのに兄弟で一緒に住んでるってどうなの?」などと、彼らの生活に余計な口出しをすることはありません。

彼らの行動が迷惑だと思えば断ることはありますが、彼らの人格や生活を否定することはしません。

それが当たり前の世界になればいいのにと願うばかりです。

Written by げんだちょふ(日本)