5年に1度、オランダ人がとても大切にしている戦没者追悼記念日

第二次世界大戦終戦から75年目

第二次世界大戦終戦から75年が経つ、2020年。

オランダでは5月4日と5日は、戦没者追悼記念日でした。5年おきに執り行われるこの記念日は、オランダ語では、”Dodenherdenking”と書き、英語の”Remenbrance Day”にあたる、戦争で亡くなった方々を追悼する日となっています。

日本での第二次世界大戦の終戦記念日は8月15日となっていますが、ヨーロッパの多くの国ではドイツが無条件降伏した5月8日が終戦の日とされています。

オランダが5月4日5日としているのは、オランダがドイツ軍から解放された日であるためです。

ダム広場にある”National monument”で執り行われるこの式典は、通常であれば国王、政府、軍隊、レジスタンス運動、社会のさまざまな組織やグループの代表者が一同に集まり花輪を捧げる、とても壮大なものです。

しかしながら、今年が新型コロナの影響で一般の人の参加は禁止され、ウィレムアレキサンダー国王、マキシマ女王、ルッテ首相、アムステルダム市長などごく少数の関係者のみの出席となりました。

 

未曾有の困難な時期だからこそ国民のために

記念式典は、5月4日19:30から20:45に執り行われました。

国民たちはテレビの生中継で国王の演説を聴き、20:00から20:02に2分間の黙祷を捧げました。その前後には教会の鐘も鳴り響き、室内にいてもとても神聖な空気が感じられました。

国王がこの場で演説をするのは異例のことで、これはコロナ禍にある国民への特別なメッセージであり、特に国王が彼の曾祖母ウィルヘルミナのイギリス亡命について言及したことは、「正直」「感動した」「誠実」と賞賛を受けました。

(当時女王であったウィルヘルミナが第二次世界大戦中ドイツからの侵略が最も激しい時期にイギリスに亡命したことで、国民は見捨てられたと絶望し、彼女を激しく非難した)

儀式や献花の式典は、通常であればオランダ内の犠牲者や占領を記念する墓や記念碑がある他の何百もの場所でも行われますが、今年はわずか数カ所でのみとなりました。

新型コロナによりアムステルダムの式典も中止の検討がされたようですが、戦争を経験したことのない多くのオランダ人にとって未曾有の困難な時期だからこそということで特別な形で執り行われました。

私は5月4日は外出しなかったのですが、翌日5月5日に所用で街に出たら、多くの家々にオランダ国旗が掲げられており、オランダ人のこの日に対する強い想いを感じました。

私にとってこの行事を経験するのは初めてのことで、よく行くバイエンコルフデパート(De Bijenkorf)の隣にあるこのモニュメント(National Monument)が何のためにあるのか、恥ずかしながら初めて知るきっかけとなりました。

そして今、オランダの土地で生きているということを思い返す日となりました。自由ということについて改めて考え、ここに平和に生活できていることに感謝しました。

コロナ禍で当たり前だった日常が破壊され不自由な生活を送っている現在ですが、それでも戦争と比べたら比べようもないでしょう。

先々週から少しずつ規制が緩和され、自由が戻り始めたオランダ。5月11日からはさらに規制が緩和され、小学校や美容師などの指定業種が再開します。

感染者はまだまだ減ったり増えたりの状況で決して安心はできませんが、それでも新しいルールと共に少しずつ日常生活が戻ってくるということに市民は喜びを隠せない様子。

今できることの中に楽しみを見つけようとするオランダ人のポジティブさに元気づけられます。最近の好天のように、街の雰囲気はとても明るいオランダです。

Written by 藤村ローズ(オランダ)