病気をきっかけにヨガを深めていったシンガポール生活
事務局:シンガポール生活はいかがでしたか?
まりこ:貴重な体験でした。シンガポールは西洋と東洋が交わりつつ、さらに中華系・マレー系・インド系・アラブ系その他と、東洋と言っても様々な文化がモザイク状で、異なる文化が刺激しあい混ざることで、新しい文化や物の見方ができるおもしろい国です。
公用語も4つ、さらに複数の宗教のお祭りを祝うので常夏の国でも1年の流れを感じながら暮らすことができます。また、多くのシンガポール人がミックス(混血)なので、東京ではマイノリティだったうちの子供達3人が普通になったことも大きいですね。
事務局:シンガポールはまり子さんにとって、家族で帯同する初めての海外だったと思うのですが、最初から順調でしたか?
まりこ:シンガポールには旅行で5,6回行っていて好きな国だったのですが、やはり子供を連れて家族で行くと勝手が違いましたね。子供たちはインターナショナルスクールに通っていたので子供を通してママ友はできるのですが、自分にとって本当に気の合う友人というのがなかなか作れなくて最初は自分の中のバランスを取るのが難しかったです。
夫には仕事、子供には学校という居場所があるのに、私には家庭しか居場所がなくて置いていかれたような気がしたこともありました。ストレスのためか原因不明の湿疹が全身にできてしまいました。最初の半年くらいが一番きつかったです。
事務局:それを乗り越えられたきっかけはありますか?
まりこ:自分の中で「ここがホームだ」と腹をくくった時でしょうか。シンガポールは2年間の契約で来ていたので、それまではどこか仮住まいという気持ちがあったのですが、「ここが家族とともに住む場所だ」と決断した時に自分の中の何かが変わりました。
あとシンガポール滞在中にがんを経験しました。幸い初期に発見できたので手術で取り除くことができて、今こうして元気でいられるのですが。他の婦人科系の病気も見つかり、7回の手術を経験しました。
事務局:それは大変でしたね。
まりこ:ええ、その時は大変でしたが、今となってはあれはギフトだったと思うんです。人間いつ死ぬか分かりません。がんじゃなくても明日交通事故に遭うかも分からないんです。だからこそ、一日一日を大切に生きるということを痛感しました。
事務局:そうなのですね。確かに明日のことは誰にも分かりませんね。つい何気なく毎日を過ごしてしまいますが、一日一日が大切なのですね。
まりこ:以前から習い事としてヨガクラスに通っていたのですが、その時の先生が手術後も色んなアドバイスをしてくれて、回復の手助けとなりました。そのことがきっかけとなり、手術後ヨガとアーユルヴェーダのディプロマの資格取得に向けて動き始めました。資格を取得して、教え始めてから数年後にヨガセラピストの資格も取得しました。
事務局:11年間シンガポールに滞在された後、ご主人の祖国であるイギリスに本帰国されたのですね。
まりこ:2013年7月のことですね。